住民票を実家のままで一人暮らしをされている社会人の方が稀にいます。
不動産屋さんとして、お引越しされる前に住民票についてご相談を受けることが多々あります。
結論から申し上げますが、特別な理由が無い限り住民票の転入届は出しておいて下さい。
詳しくは後ほどご説明しますが、法律上では罰金が発生する可能性もあります。
今回は、住民票を実家のままにして一人暮らしをすることが可能な条件とデメリットについてご紹介いたします。
住民票を実家のまま一人暮らしするのは違法?
区役所に聞いてみた
私はお引越しされるお客様からご相談があって、区役所に住民票について相談したことがあります。
その際、住民票は基本的に転入した区市町村へ届けるようにと指導がありましたが、以下の2パターンの方においては、場合によっては住民票を移動しないことを認めているとのことでした。
- 実家と一人暮らしの住まいが半々で生活をされている方
- 一時的な出張などで数か月程度の一人暮らしの方
上記の2パターンの場合は住民票を移さなくても良いと区役所で聞いたのですが、明確な判断基準はないとのことでしたので、結局はお住まいの区市町村の判断になります。
住民票を移すときに本来必要な手続き
本来、実家を出て一人暮らしをする際は、転出届と転入届または転居届を出す必要があります。
転出 | 元々住んでいた居住地の区市町村を出ること |
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転居 | 元々住んでいた居住地の区市町村内で引っ越すこと |
転入 | 新しい居住地の区市町村内で引っ越すこと |
転出する区市町村で転出届を出した際に、転出証明書が渡されますので、その証明書を持って転入先の区市町村役場で転入届を出す必要があります。
同じマンション内で違う部屋に引越した場合や、実家の近くで同じ区市町村内で引っ越した場合は、転居届で済みますので簡単です。
転入における法律
住民票の異動については、住民基本台帳法という法律が定められております。
第二十二条 転入(新たに市町村の区域内に住所を定めることをいい、出生による場合を除く。以下この条及び第三十条の四十六において同じ。)をした者は、転入をした日から十四日以内に、次に掲げる事項(いずれの市町村においても住民基本台帳に記録されたことがない者にあつては、第一号から第五号まで及び第七号に掲げる事項)を市町村長に届け出なければならない。
一 氏名
二 住所
三 転入をした年月日
四 従前の住所
五 世帯主についてはその旨、世帯主でない者については世帯主の氏名及び世帯主との続柄
六 転入前の住民票コード(転入をした者につき直近に住民票の記載をした市町村長が、当該住民票に直近に記載した住民票コードをいう。)
七 国外から転入をした者その他政令で定める者については、前各号に掲げる事項のほか政令で定める事項
2 前項の規定による届出をする者(同項第七号の者を除く。)は、住所の異動に関する文書で政令で定めるものを添えて、同項の届出をしなければならない。
要約すると、新しいお部屋へ引越しをして14日(2週間)以内に市区長損役場へ転入届を出す必要があると法律で決められています。
社会人の方であれば仕事をしつつも、引っ越し後の荷ほどきもして、新生活に必要な物を買ったり、インフラ(電気・ガス・水道)の手続きを行ったり、クレジットカード会社に住所変更の手続きも行ってと目まぐるしい作業に追われますので、14日以内に転入届を出すことは面倒だと思いますが忘れないように注意しましょう。
違反した者には罰金が発生する
実家を出て引っ越した後に一人暮らしを始めたのに、転入届を出していないくらいでは何も罰則がないと思っている方が多いです。
第五十二条 第二十二条から第二十四条まで、第二十五条又は第三十条の四十六から第三十条の四十八までの規定による届出に関し虚偽の届出(第二十八条から第三十条までの規定による付記を含む。)をした者は、他の法令の規定により刑を科すべき場合を除き、五万円以下の過料に処する。
2 正当な理由がなくて第二十二条から第二十四条まで、第二十五条又は第三十条の四十六から第三十条の四十八までの規定による届出をしない者は、五万円以下の過料に処する。
上記の通り、住民基本台帳法では5万円以下の過料が罰則として定められていますので、注意が必要です。
実際に過料を請求されたケースは周囲で聞いたことがありません。
でも、請求された場合は法律で定められているので言い逃れはできません。
社会人の一人暮らしで住民票の出番はいつ?
社会人の一人暮らしでどんな時に住民票の出番があるのか、ご紹介します。
まだ住民票を実家のままで良いかなと思っている方は、どんな時に必要になって困ることがあるかご確認ください。
会社やバイト先への提出
会社は通勤手当を支給するにあたって、現住所を確認する資料として住民票を求めてきます。
また、住民税や社会保険・厚生年金などの行政手続きにもマイナンバーが必要となりますので、マイナンバー入りの住民票を求めてくるケースもあります。
その際に、現住所が実家のままであったりすると、特別な理由がない限り会社も転入届を出したうえでの住民票を求めてきます。
賃貸契約やマンスリーマンション・シェアハウス
いま一人暮らしをされている方でも、引っ越しのタイミングに賃貸契約、シェアハウスへの入居手続き、出張でマンスリーマンションを借りる等の様々な場面で住民票が必要となってきます。
住民票の住所と現住所と相違が出ていると他にも書類を求められることになります。
運転免許証の更新
運転免許証の更新には本籍入りの住民票を求められます。
車やバイクの購入・名義変更
車や原付・バイクの購入時に住民票を求められます。
また、名義変更や自動車保険などでも住民票の出番がありますので、ドライブ好きの方は住民票が必要なシーンが度々あると思ってください。
証券口座や金融機関の口座開設
国内の証券口座だけでなく海外FX業者の口座開設や、その他仮想通貨系の口座開設にも住民票が求められることがあります。
資産運用を考えていない方には関係が無いかもしれませんが、各金融機関の提出書類はご確認ください。
パスポートの申請手続き
長期休暇で海外旅行に行く際や、海外出張に行く際はパスポートが必要になります。
パスポートの新規発行だけでも1週間前後はかかりますが、現住所の住民票を申請時に用意する必要があります。
住民票を実家のままにしていると金銭的デメリットも
ふるさと納税のとき
所得税の還付や住民税の控除を受けるためにふるさと納税をされている社会人の方も増えてきていますね。
ただ、マイナンバーカードや通知カードを持っていない人は住民票の写しが本人確認書類として必要になります。
生命保険にも必要
一人暮らしをされている社会人の方でも最近はネット保険などをの生命保険に加入されている方は多いです。
何か事故にあったり、病気になったときのために生命保険に加入しようとした場合は住民票が必要になることがあります。
失業手当のとき
万が一ですが、失業した場合に失業保険を受けようとした際、住民票の所管地のハローワークへ行くことになります。
住民票が実家のままで実家が遠い場合は、手続き上の利便性を考えて現住所に住民票を移しておくことをオススメします。
社会人なら何かと住民票が必要になります。
面倒なことに、様々な手続きの度に本人確認書類として住民票を求められます。
しかも、現住所と住民票の住所が異なると、手続きがより面倒になったり手続き自体が進まなくなる場合があります。
もし、お引越しされて住民票を実家のままにされていて、特段の理由が無いのであれば空いた時間にでも転出と転入届を出しておきましょう。
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